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石巻2.0がプロデュースする、「攻め」の地域自治システム

 一般社団法人石巻2.0は、「オープンであること」「クリエイティビティ」「DIY」などをキーワードに、震災前のまちに戻すのではなく、それ以上を目指し独自にプロジェクトを仕掛けてきた。そんな彼らがいま、行政とともに地域の自治システムを構築するための支援事業に取り組んでいる。その先に見据えるものとは何か? 代表理事の松村豪太さんにお話を伺った。

自由な発想を促す「フェアな不平等」

 2014年9月、石巻市の山下地区に「山下地区協働のまちづくり協議会」が立ち上がった。山下地区は、山下町をはじめ16の町内会からなり、約9000人5000世帯が居住する住宅地エリアだ。「協議会の運営を行う中心メンバーは現在だいたい25人。ウォーキングのイベントなども浸透してきて、活動する人も徐々に増えてきた印象」と松村さんは話す。

 市の地域協働課からの依頼を受け、石巻2.0が地域の自主性を構築するサポート事業を受託したのが2013年7月。協議会立ち上げまでのスタートアップを担う委託事業として、山下地区の協議会立ち上げへ向けた話し合いの場づくり、声かけ、会議の進行補助を行った。話し合いの質を高めるために、地域のキーパーソンには1対1でのヒアリングも実施。住民の本音を引き出していった。

山下地区でのワークショップは約半年にわたって開催した

山下地区でのワークショップは約半年にわたって開催した

 「それらの声を踏まえて会議をワークショップ形式も取り入れながら進め、コンセプトづくりをしたり、地図を広げて課題をマッピングしたり。選んで決めていかなければならない場面も増えていくため、その場合は論点となる要素を見える化し、好き嫌いではなく客観的に比較できるよう心がけている。けれどなんと言っても参加するのは僕よりずっと人生経験豊かな地域の方々。進めるうえでの心配はまったくいらない」と微笑む。

 これまでの石巻2.0の活動は、まちなかの活動を伝播させるためのフリーペーパー「VOICE」や「石巻まちあるきマップ」の発行、被災した空き店舗をDIYで改修した「復興バー」といった場のプロデュースが中心だ。IT技術を地域産業と結びつけながら学ぶ拠点「イトナブ」などのように、石巻2.0をプラットフォームとして独立し、活動を続ける姉妹団体もある。今回の行政との協働による地域自治システムサポート事業は意外とも感じられたが、コミュニケーションを重視した体験型の夏祭り「STAND UP WEEK」開催などのように、テーマで区切らず、アイデア重視で企画を実現させんとする石巻2.0流の手法は変わらない。

地図作りを通して街を知ろうという「石巻まちあるきマップ」の企画。実際に協議会メンバーで街を歩きながら課題や良いところを知る

地図作りを通して街を知ろうという「石巻まちあるきマップ」の企画。実際に協議会メンバーで街を歩きながら課題や良いところを知る

「まずやってみるなかで、テーマが浮かび上がってきたり、プロジェクトが経常的なものになってきたりするもの。『これはこういうもんだろう』と決めつけてしまうと、僕にとってはおもしろくない」。既成概念から離れて自由に発想できる「フェアな不平等」さを松村さんは重視する。それはやりたい人がチャレンジでき、がんばりたくない人はがんばらなくていいという雰囲気でもある。これまでまちなかで作り上げてきたものを、今度はひとつの地区に入り、住民と顔を合わせながら実践していこうということなのだ。

2.0の哲学とメソッドを、地域に「インストール」する

 今回の行政との協働事業も、2012年秋に石巻で行ったイベントがきっかけだ。震災直後からつながりのあった弘前大学教授の北原啓司さんが、行政と市民との協働のあり方を話し合う意見交換会を発案。その際、岩手県北上市と大槌町での先進的なまちづくり事業に携わる関係者を招き、石巻市の課長レベルの職員にも呼びかけるなど、そのコーディネートを石巻2.0が引き受けた。こうして行政と膝を突き合わせて話し合う機会を得て、自ら市と「しっかり出会った」ことが活動の転換点にあるという。

 しかし、今度の事業は9000人という数町規模のマネジメント。地域全体のコミュニティづくりでは、これまでの自由な活動とは違い、苦労した点も多いのでは? そう尋ねると、松村さんは「そんなことはまったくない」と即答。「方向性は同じなので、これまでやってきた方法を地域にインストールしていくイメージ。僕らの派手なやり方を見て『村祭りも素朴にやるだけじゃなく、デザインや言葉の使い方を工夫しよう』と参考にしてくれたり。僕らがやるべきことは、そんな風に喜んでくれる主体をどんどん掘り起こしていくこと」。

 山下地区のほか、住民自治のサポートを続けてきた桃生地区でも、今年7月に自治協議会「桃生夢ネットワーク」が発足。今後も協議会立ち上げ等の支援を行う地域は増える見込みだと話す。「中期的な目標は、山下地区や桃生地区だけでなく、協議会をベースとした僕らの発想を受け継ぐ地域の担い手、『村プロデューサー』を、増やしていくこと」。そして最終的なゴールに見据えるのは、協議会を中心に地域住民が話し合って地域計画を策定していくことだと言う。

 石巻2.0では、地域共同体が地域の課題に応じて自主的な取組みを行う「小規模多機能自治」へ向け、約20人規模からの地域コミュニティの支援なども現在同時に行っているという。「具体的には災害公営住宅への移転や、移転先の新しい居住区での町内会づくりのサポートなど。つくったら、今度はやらされるのではなく、住民同士が会話して楽しく機能させられるような『攻める町内会』を目指している」。

 石巻2.0のスタッフ数は現在10人。当初は松村さんしかいなかった地元スタッフも、今や半数にまで増えた。「組織としても転換期。結成当初のモチベーションを維持しながら、単なる『いいこと』をやる団体にならないよう尖り続けたい。ただ当たり前にまちの人の声を聴くのでは、声が大きい人の方に方向性ができ、また活気の少ない残念なまちに戻る。優等生の模範解答だけでなく、いろいろな人が自由に発言できる雰囲気を作っていかなければ」と松村さん。

 山下地区での夏祭りに、桃生地区の「はねこ踊り」がゲストで登場するような地域間の交流もそのうち生まれるかもしれない。各地域にどのような雰囲気が醸成され、それらがどのようにつながっていくのか。石巻2.0のコミュニティづくりは、新たな展開が拓かれようとしている。

文/井上瑶子

提供元:東北復興新聞 (http://www.rise-tohoku.jp/?p=11171)


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