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模型が引き出す住民の笑顔「記憶の街ワークショップfor富岡」

作り込みリストは、実際に聞いた住民の声を元に、色や形をまとめていく。地域によって違うコミュニティの様子が浮き彫りにされていく

作り込みリストは、実際に聞いた住民の声を元に、色や形をまとめていく。地域によって違うコミュニティの様子が浮き彫りにされていく

「夜ノ森駅ですね」「ここは単線だったんですよ」「ツツジがきれいでね」「桜並木はここまであったんだよ」富岡町の復元模型を前に住民たちの声がはずむ。中には町の住宅地図を手に、住民の名前を一つ一つアクリル板に書き込む人の姿も見られた。ワークショップを主催する神戸大学大学院工学研究科の槻橋研究室の学生らは、住民から話を聞きながら名称や思い出のキーワードをアクリル板に書き込んだり、模型に立てたりしていく。福島県郡山市にある富岡町の交流施設「おだがいさまセンター」で開催された「記憶の街ワークショップfor富岡」で見られた光景だ。

1メートル四方の模型は、1/500縮尺で町を復元している。住民にとってなじみ深い富岡町の中心部と夜ノ森地域の2箇所を復元した。復元箇所は、町役場の職員や、自治会の会長などを交えた会議で決めた。

完成しつつある模型を見る槻橋准教授。槻橋氏が考案したアクリル板でできた思い出の旗が、だんだんと集まっていく。旗は思い出の種類ごとに色分けされている

完成しつつある模型を見る槻橋准教授。槻橋氏が考案したアクリル板でできた思い出の旗が、だんだんと集まっていく。旗は思い出の種類ごとに色分けされている

模型を使って思い出をプロットするワークショップを考案した槻橋修准教授は、2009年まで東北工業大学の講師だった。また震災発生前の3月7日は、仕事で気仙沼に出向いていた。2011年5月、槻橋准教授は気仙沼市の危機管理課長に会った。震災直後の防災体制について約1時間半にわたり、気丈に説明してきた課長が、話の最後に気仙沼の模型の見取図を手にした槻橋准教授から「街を再現しようと思うのですが」と切り出されたとき、突然泣きだしたという。「『もう一回、この街に会える。うれしい』って言ってくださったんです」(槻橋准教授)この言葉に力を得て、最初のワークショップは気仙沼市で開催された。津波に街を奪われた町の人たちの反応は「(失われた街に)また会えたね」というものだったという。

槻橋准教授はプロジェクトを始めたきっかけを、このように語った。「建築を通して街を研究したり、まちづくりをしたりしている立場からいうと、人と街は切っても切り離せません。コミュニティや人々の記憶は、山や景色などを含めた街と一緒にあるからです。それがある日、地震や津波によって突然、切り離されたということは、すごく大変なこと。ですから、その場所がどんな場所だったのか、住民の方が『この街に住んでいた』という愛着を忘れないようにアクリル板でプロットしていく。その作業によって思い出をもう一度活性化していく。それによって住民の方たちが、少しでも次のステップに行っていただけたらいいなあと」。

住民のつぶやきをメモにしてまとめる学生。これらの声は「つぶやきBOOK」にまとめられ、WEBサイトに掲示されたり、住民から求められれば冊子にしているという

住民のつぶやきをメモにしてまとめる学生。これらの声は「つぶやきBOOK」にまとめられ、WEBサイトに掲示されたり、住民から求められれば冊子にしているという

模型プロジェクトへの参加が今回4回目になる、大学院1年生の有田一乃さんは言う。
「どのワークショップに行っても、みなさんが自分の住んでいた街のことを本当に愛していたことがわかります。私はその場所に来たことがないけど、住民のみなさんの話を聞いて、素敵な街だったんだなぁと思えるほどにです。だから今までは、震災というつらい経験によって塗り変わってしまった記憶の中から、楽しかったことを思いだしてほしいという気持ちで参加してきました。ただ今回、富岡町のある方が『すごくつらい思い出もあるけど、前を向いて生きていかなきゃ』と話すのを聞いて、もしかしたらこの模型は、少しでも前を向くためのきっかけになるんじゃないかなと感じました」。

ワークショップ最終日「いわき平交流サロン」での様子。だんだん色づいていく町の模型を見る住民たちの声もはずむ

ワークショップ最終日「いわき平交流サロン」での様子。だんだん色づいていく町の模型を見る住民たちの声もはずむ

6月1日から1週間にわたって行われたワークショップ。学生と住民の会話を目の当たりに見て感じたのは、模型の持つチカラである。津波に流された家が立体となって再現する。かつて自分が住んでいた家の屋根の色を塗る。白い模型が色づくにつれて、人々の表情が輝いてくる。自分の子どもや孫くらいの年頃の学生たちに「ありがとうね」「お世話になったね」と声をかける人の姿。これこそが文章や写真、映像にはできない模型の持つチカラだ。

槻橋研究室では、仕上がった模型の使い道を、行政と協力しながら検討している。富岡町では今後、町民と話し合いながら復興関係の行事などに活用していきたいそうだ。色づいた模型に町民たちの笑顔が重なって見える。

文/武田よしえ

提供元:東北復興新聞 (http://www.rise-tohoku.jp/?p=10519)


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